■設立の主旨■

 日中戦争・第二次世界大戦が終了して60年、戦争は風化するどころかますます私たちに重くのしかかり、かつそれを語る人が各自の思惑を込めて語っているためか、近代日本の姿はいっそう混迷の度を深めています。もちろん混迷を深める原因は戦争に限ったことではないでしょうが、どちらにしても、私たちは一度ここで立ち止まって過去を振り返り、未来への備えをする必要があるようです。そして、それは今まで以上に正確で精緻な史実の上での議論によってなされなければならず、そのためには一次史料の存在が何よりも重要であることは論を待たないでしょう。

 しかし、戦災・震災・火災、あるいは非公開、意図的廃棄などによって、これまで十分に史料を利用することができませんでした(近年の情報公開法によってやっと公的機関の公文書非公開は緩和されましたが、依然として大きな問題点を抱えています)。このような状況を打開すべく、1960年代頃から内政史研究会・日本近代史料研究会・木戸日記研究会などの組織、及び個人としての研究者が、私文書を中心に史料収集に努めてまいりました。

 それから40年の歳月が立ち、我々自身にも「過去を振り返り、未来への備えをする」必要性が生まれてきました。そこで、私たちは既に解散してしまった内政史研究会・日本近代史料研究会・木戸日記研究会を継承する形で平成9年4月に近代日本史料研究会という団体を立ち上げ、1.これまでの努力によって膨大な量に達した史料群をとりあえず現時点でまとめておくこと、2.膨大であるにも拘わらず非体系的な形でしか存在していない史料群を容易に把握できるようにするための近代史料所在情報に関する機関を設立すること、3.さらなる史料を収集し同時に史料と補完関係にあるオーラルヒストリーを実施すること、を目的に科学研究費などの助成を得て活動してまいりました。このうち、1は『近現代日本人物史料情報辞典』第1・2・3巻として結実しつつあり、3も我々の科学研究費成果報告書をご覧いただければお分かりになる通りの成果を挙げてまいりました。ただし、残念ながら2は未だ緒についておりません。アーカイブ制度が整った欧米諸国と比較する時、わが国の現状は甚だ寂しいといえましょう。

 今回、このホームページを立ち上げたのは、私たちの活動成果を歴史研究者のみならず歴史に興味を持っていらっしゃる方々に広く共有していただくと同時に、私たちの活動にご理解、ご協力をいただきたいと思ったからです。


近代日本史料研究会代表 伊藤 隆